『訪ねてみたい日本・かおり風景100選』


 JR山陰本線浜田駅から国道9号を東へ車で15分、浜田自動車道浜田インターから約4キロメートルのところに「石見畳ヶ浦」がある。石見畳ヶ浦の大部分を占める5ヘクタールに及ぶ平坦な磯は、地震によって海面下から隆起したもので、学術的にも高い評価を得ており、昭和7年には国の天然記念物に指定された。
 磯には縦横に規則正しく亀裂が走り、ちょうど畳を敷き詰めたように見えることから「千畳敷」と呼ばれた。古くは和歌にも詠まれるほど、この地域における名勝として知られている。海食崖や千畳敷には貝、鯨骨、流木片などの化石が一面に広がり、化石を核にした珍しい腰掛状の丸い岩(ノジュール)が立ち並び、断層、海食洞などとともに訪れる人の夢をかきたててくれる。ここに立つと太古の幻想にかられ1600万年前の世界がよみがえる。子どもたちにも人気の「天然の博物館」だ。
 また一帯は、島や岩礁が点在し白砂青松にも恵まれ、寄せては返す波や怒濤が、四季を通じて荒涼とした風景をつくり出している。「千畳敷」の入り口一帯は、民宿や土産物屋が立ち並び、シーズンには海水浴客や釣り人で賑わう。通りには特産物のイカ、魚、ワカメなどの天日干しの光景を目にすることができ、海産物と海をわたる潮風が織りなすやわらかい磯のかおりが漂う。
 「石見畳ヶ浦磯のかおり」は、訪れた人々にほのぼのとした郷愁を誘い、安らぎを与えてくれる。「千畳敷」へのトンネル遊歩道の中間どころは、潮騒に包まれた海食洞が広がり、この洞穴は地元では「穴観音」と呼ばれ、ここに安置されている観音像は海上安全の守り神として信仰を集め、漁業者など多くの参拝者が訪れる。
 石見畳ヶ浦は、山陽をはじめ北九州、京阪神方面などから多くの観光客、海水浴客、釣り人などを迎えている。周辺には島根県立石見海浜公園があり、ここは日本の水浴場八十八選にも選ばれるほどの海水浴場のメッカでもある。そのほか、白イルカが泳ぐ水族館「アクアス」、展望浴場のある「国民宿舎千畳苑」、アイススケート場「サンビレッジ」、ゴルフ場などの施設が配置され、一大レジャーゾーンとなっている。