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シリーズ「島根あさひ社会復帰促進センター」その7 受刑者への就労支援について

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  今、日本の治安は危険水域にあると言われています。内閣府が実施した調査によると、この10年間で治安が悪くなったと思う人の割合は8割を超え、半数以上の人が今の日本は、安全で安心して暮らせる国とは思っていません。安全なはずの自宅で強盗の被害に遭ったり、路上でひったくりの被害に遭ったりする例が後を絶たないことなど、国民の皆さんが身近に感じるところで治安が悪化していると考えられます。
 治安対策については、これまでも様々な取り組みをしていますが、新たに刑務所に収容された受刑者のうちおよそ半数が再入受刑者、つまり過去に刑務所で受刑したことのある人であるという事実を考えると、治安問題解決の重要な鍵の一つは再犯防止策を充実させることにより、再入受刑者を減らすことであると考えられます。
 再入受刑者を減らすことには大きく分けて二つのメリットがあります。
 一つ目は、もちろん治安の向上です。再び犯罪を犯す人が少なくなれば、犯罪被害者の数も少なくなり、社会全体の平安が保たれます。
 そして二つ目は、社会コストの削減です。現在、受刑者一人を収容するのに年間でおよそ270万円もの費用がかかっています。その財源は皆さんが納めている税金なのです。
 それでは、再入受刑者を減らすために最も大切なことは何でしょうか。それは受刑者に対する就労支援策を充実させることです。

国内の現状

 これまでも刑務所では、様々な職業訓練を行ってきました。ところが、社会の雇用情勢がどんどん変化していく中で職業訓練の内容が、必ずしも就職に直接結びつくような内容となっていない傾向にあります。
 そこで今後は、刑務所の中に民間企業が自ら直接入って受刑者に対し職業訓練を実施してもらうことにより、職業訓練の内容を社会の雇用情勢を十分に反映したものにしていく必要があるのです。

海外での取り組み

 ところで、受刑者への就労支援に対する海外での取り組みはどのようになっているのでしょうか。
 英国は刑務所業務への民間参入が進んでいる国で、民間企業による受刑者への就労支援も積極的に行っています。
 一例を紹介すると、ロンドン郊外にあるエイルズベリー少年刑務所では、英国トヨタが自動車整備工場を建設し、トヨタが開発した整備士養成プログラム、教材としての自動車を提供して職業訓練を実施しています。そして受刑者に自動車整備士の国家資格を取得させ、出所後、自動車整備工場などに就職させています。
 また、このエイルズベリー少年刑務所の職業訓練工場では、英国トヨタが提供した中古ランドクルーザーを受刑者がサファリ仕様に改良し、改良された車はアフリカのマリ共和国に輸送され、コミュニティーサービスの車として活用されています。このマリ・プロジェクトを通じて受刑者は,単に技術を習得できるのみならず、社会貢献を行う実感もまた味わうことができているようです。
 もう一例紹介すると、英国最大手ガス会社ナショナル・グリッド社は、20か所の刑務所で主に受刑者にガス設備士などの技能訓練を実施し、訓練終了後、同社とその関連企業への雇用を保証する「受刑者訓練・雇用プログラム」を行っています。これらの施設で5週間の訓練を経た後、ナショナル・グリッド社の関連会社に近い刑務所に移送され、外部通勤による実地訓練も含め更に8週間の訓練を行い、ガス設備士国家資格を取得して関連企業に就職しています。
 これにより、ナショナル・グリッド社としては再犯防止策への取り組みという社会貢献を行うことができるとともに、不足している人材の確実な確保という民間企業の事業経営に直結するメリットも享受できます。
 既にナショナル・グリッド社は100人を超える受刑者を再就職させ、これまで再犯を行った人はそのうち7%に過ぎません。
 また、ナショナル・グリッド社は、このプログラムの実施をほかの英国企業に呼びかけ、現在、83の英国の大企業で実施されており、来年までに1,000人に対しこのプログラムを実施する予定です。

今後のあり方

 このように、受刑者の就労支援策をより実効あるものにするためには出所後、彼らを受け入れることになる地域社会、とりわけ彼らの就職先となる民間企業の協力は欠かせません。
 就労支援に参画することは、国民の皆さんが強く求める安全な生活の確保に直結するものであり、安全な生活が確保できれば経済的にも活発で収益性の高い社会を実現することができ、社会貢献として非常に意義深いものだと考えます。英国で就労支援に参画している民間企業の多くは、とてもやりがいがあり充実感があると感じているようです。
 是非ともより安全で暮らしやすい社会の実現のため、民間企業の皆さんのノウハウを受刑者の改善更生のために役立ててもらいたいと思います。行政と共にこの課題に取り組んでまいりましょう。そしてより安全で暮らしやすい日本を取り戻しましょう。

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